「はい、これ…あげる」

 HONKYTONKでコーヒーを口に運んでいたオレの目の前に、そう言って小さな箱が差し出された。コーヒーカップをカウンターの上に置き、箱と目の前の人物を交互に見やる。

「これ…って、何…こんなクソ丁寧な包装してオレにくれるってか?」
「うん…蛮ちゃんに、オレからのプレゼント」

 照れたように少し笑いながら、銀次がその箱をオレが受け取るのを待っている。そんな銀次の様子を可愛いな…等と思いつつ、オレは今日が何かこんなものを貰うような特別な日だったかと、思考を巡らせた。
 今日は12月17日。この日は…そう、皮肉にもオレが生まれた日だ。生まれてくる事を祝福されてなどいなかったオレの、この世に生まれ落ちた日…。

「今日…オレの…」
「そう。今日蛮ちゃんの誕生日でしょ?…だからオレ、これを蛮ちゃんにプレゼントしたいの」

 銀次は呟いたオレの言葉を遮りそう言って、またさっきの箱をオレの前に差し出す。オレの手にすっぽり収まりそうなサイズの小さな箱を、オレは期待に満ちた眼差しで見つめてくる銀次の視線を意識しつつ、受け取った。

「…お前、言われるまで自分でも忘れていた事なのによく…覚えてたな…」

 そう…今日がそんな日だなんて事、オレ自身でさえ忘れていたのに…コイツが覚えててくれたなんて。

「だって…蛮ちゃんだって前にオレの誕生日祝ってくれたでしょ?オレ…すごく嬉しかったから…だから蛮ちゃんにもしてあげたいなー…って、おめでとうって言いたいなって…思ってたの」
「銀次…」

 心底嬉しそうにそう語る銀次に、心の奥が熱くなるのを感じる。こんな風に、オレの事を気にかけてくれる銀次が愛しくて、オレは自分でも気付かないほど無意識に、穏やかな気持ちで目の前の銀次に微笑んだ。

「…お誕生日、おめでとう…蛮ちゃん。蛮ちゃんがこの世に生まれてくれた事、オレすごく嬉しい…」

 オレを真っ直ぐに見つめて銀次がそう言ってくれる。それだけで…こんな命でも生まれてきて良かったんだと…そう、思えた。
 そんな事を思いながら銀次と銀次のくれたプレゼントを見ていると、オレの背中へ抱きついて腕を回してきた銀次の温もりを感じた。

「…オレ、一生懸命選んだんだよ?蛮ちゃんが一杯喜んでくれるようにって…」

 耳元に届く少し高めの銀次の声を聴きながら、その様子を思い浮かべてオレはつい笑みを漏らして。

「あっ、ひどーい…なんでそこで笑うの?」

 照れを隠すように少し膨れた顔で文句を言う銀次の声に、堪らない安堵を覚えてオレはもう一度、穏やかな気持ちで微笑んだ。

「…ありがとう…銀次…」

 背中の銀次を振り返りながら言うと、ますます頬を染めた銀次は縋りつくようにオレの背に顔を埋めて全身でオレを抱き締めた。

 その言葉では表しきれない感覚に、オレも銀次を抱き締め返して、自分の生にはちゃんと意味があったのだという事を、その心地良い温もりの中…オレは深く強く、噛み締めた―――――。


ホントはカラーでやりたかったのですが…時間的都合でイラストは単色になってしまいました…なのでおまけSSをつけてみました。
何だかSSかなーリ甘いですね…久しぶりだからかしら…蛮銀書くの(-_-;)最近私の心を占める作品の優先順位が激しく変動してるから…。
大半は遙か再燃の為なんですが(笑)花帰葬萌えも相まって活動が縮小されそうです…。まだまだ書きたいくらい好きなのは好きなんだけどねー(笑)とりあえず原画集はゲットします(笑)

                                          2005,1,18
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