clumsy affection


 
日差しが眩しい晴天の下、俺はある場所を目指して歩いていた。うっすらと汗が浮ぶ程に、気温は高い。雄々しく脈打つ生命の息吹に満ち溢れた、素晴らしい日和だ。
 ふと、手を繋いで自分についてきている少女の事が気になり、俺はそちらに視線を向けた。
「…なぁ、ずっとこうしてちゃ暑くねぇか?」
「士度さんは暑いの?私とこうして手を繋いでて…」
 俺の声にそう答え、少女は可憐に笑う。
 彼女の名は音羽マドカ、この俺冬木士度が居候させてもらっている音羽家のお嬢さんで…今では俺にとって掛け替えのない大切な存在だ。
「…士度さん?」
「あ、わ…悪い、ただちょっと手が汗ばんでたからよ…それで熱いんじゃねーかと…」
 本心を言うと、それだけではない。どうも近頃俺はマドカといると柄にもなく照れたりしてしまうんだ。マドカの見せる何気ない仕草や表情に、必要以上に反応してしまう。
 それと同時に、こいつを守りたい、他の誰よりも先に自分の手で守りたいと、そう思うようになった。例え魔里人の宿命に巻き込む危険があろうとも、この腕から失くせない、失くしたくない、と。
 微熱のように、この心に住み着いた感情が恋だと知るのに時間はかからなかった。  そう、俺はマドカを一人の女性として愛している…。
 今日は絶好の行楽日和、以前からマドカが行きたいと言っていた遊園地へと、朝から二人で出かけて現在に至る。  
 この日の為に俺は必死で働き金を溜め、綿密な計画を立ててきた。全てはマドカともっと近い存在になる為だ。
 今日こそはマドカに俺のこの気持ちを告白してみせる…!!
 俺はそんな決意を胸に、マドカと手を繋いだまま目的の遊園地の門を潜った。


 園内に入ると、明るい曲調の音楽が聴こえてきた。だが、普段からマドカのバイオリンを聴いている俺には、何処をどう聴いてもマドカのバイオリンの演奏に比べて劣っているようにしか聞こえない。これでは俺の計画を盛り上げるBGMとしては役不足じゃないか?
 とはいえ、園内で流れているものだから止められるものじゃない。仕方なく俺は大目に見る事にして、盲目のマドカを先導して歩き出した。
「…どれから行きてぇ?乗り物か、お化け屋敷の系統か…ああ、中央広場で何かのショーもやってるみてーだな」
 俺は園内案内のパンフレットを見ながら、マドカに行きたい場所を訊く。マドカが行きたいとずっと願っていた所だ、マドカの好きなものに付きあってやろうと思ったからだ。例えそれがメリーゴーランドやコーヒーカップなどのファンシー系な物でも、一緒に乗ってやれるだけの覚悟は出来ている。
 『恋は盲目』とは良く言ったものだと、恥ずかしさにも勝る恋愛感情を体現しかけている俺はそう思った。
「…私、ジェットコースターに乗ってみたい!あと、アヒルのボートとか、ミラーハウスも行ってみたいし…それから…」
 意外な乗り物を筆頭に、マドカはあれもこれもと次々に行きたい所を話す。まず真っ先にジェットコースターが出てきたのは驚いたが、マドカが乗りたいというなら乗せてやりたい。
「あとは、観覧車。…これだけは絶対乗りたいなぁ…」
「それじゃあ、まずはジェットコースターだな…それから他のも行くか」
 俺が言うと、マドカは嬉しそうに笑って、『はい…っ』と返事を返してくれた。
 とりあえず計画は順調に進んでいるみたいだ。マドカも喜んでくれてるようだし、このままいけば告白もきっと上手くいくに違いない。このまま自然にマドカとの距離を縮められたのなら。
 その為にもまずはマドカをエスコートしながら、少しずつアピールする。そして頃合を見計らって抱き寄せてみたりして…それでも嫌がらずに側にいてくれるなら、この気持ちを伝える。
 俺は今日の計画をもう一度頭の中で復唱した。


 ジェットコースター→ミラーハウス→フリーフォール→お化け屋敷と、マドカの要望に応えてアトラクションを回り、俺達は昼食を兼ねて休憩するべく、園内のベンチへと腰を落ち着けていた。
 今日はマドカが一生懸命作った手料理を持参している。以前マドカの料理を食って大変な経験をしたのも懐かしい…けれどその頃よりはマドカの料理の腕も幾分かマシになっている筈だ。それに、何より俺の為に上手くなろうと努力してくれる事が嬉しい。
 膝の上に広げられた色鮮やかな弁当は見栄えも良く、申し分ない盛り付けだった。  その中から綺麗に巻かれた玉子焼きを箸で掴んで、口へと運ぶ。口の中に広がる仄かな甘みが更に食欲をそそる。
 何だよ、すごく美味いじゃねぇか…っ。ここはやっぱちゃんと褒めてやるべきだよな、男として。
「どう…士度さん…?美味しい…?」
 マドカも俺の感想が気になっている今がチャンスだ。言うぜ、美味いって…!
「マドカ…ああ、美味…」
「うんめ〜Vv最高の味付けだぜ、銀次〜Vv」  
 最後まで言い終わる前に、俺の声に被さって頭の悪そうな気の抜け切った声が聞こえてきた。この声は考えるのもムカつくが蛇ヤローのものに違いない。何でてめーがここに居やがる…!?
「…本当っ、蛮ちゃん?」
「おおVv糸巻きの指南ってのが気に食わねぇが、上達してるぜ」
「…一言多いですよ、美堂君。僕はただ銀次さんの力になりたいだけです」
 美堂だけでなく銀次や花月もいるのかよ…?しかもその口ぶりだと銀次が美堂の為に料理をしてるって事か!?花月が料理好きなのはいいとして、銀次までそんな事してるのかよ…。
「美堂、花月のする事に文句をつけるのは許せんな…」
「…俺も筧と同感だ、貴様に花月を貶されるのは気に入らないな」
 オイオイ…十兵衛に雨流までいるのか…。男ばかり五人も集まって何してんだよ…。大体野郎だけで来るのは虚しくねーのか、こいつら…。
「今のって蛮さん達の声よね…士度さん?」
 嗚呼…折角二人きりで過ごせると思ってたのに、こんな所で台無しかよ…。しかも美味いって言いそびれちまったじゃねーか…ハァ…。
「蛮さーん、銀次さーん…っ」
 嗚呼っ、そっちに行くなマドカ…っ!俺がそう思いながら、立ち上がって美堂達の方へ行こうとするマドカを止めようとするが、間に合わなかった。
「あれ?マドカちゃんだ〜☆」
 近づいてくるマドカの姿を見つけた銀次が笑顔で手を振る姿が見える。
「皆さん、こんにちは」
「…こんにちは、こんな所で会うなんて珍しいですね」
 マドカが美堂達に挨拶をすると、花月がそう答えて会釈する。その近くで雨流が不思議そうな顔でマドカを見ていた。てめー、何人の連れをじろじろ見てやがる…!?
「…花月、この女性は…」
 そういえば雨流はマドカとちゃんとした面識はなかったか。あの時は事態が事態だったしな。
「うん、音羽マドカさん…士度の彼女だよ」
 花月は本人を前にしてあっさりとそんな事を言った。ちょっと待て、まだそうなってねーのにそういう事言うなって…っ。
「え…?わ、私が士度さんの…!?」
「花月!いきなり何言ってんだよ…っ」
 俺とマドカの声が重なった。そうなれたらいいと心の奥で望んでる俺としては、どうも気恥ずかしくてならない。だが、マドカの方も顔を赤くして照れている様子を見ると、脈はあるのかもしれない。なんて、つい都合のいい解釈をしてしまう。
「ああ、士度…君も来てたんだね」
「さらっと流すんじゃねー、今の発言は何だよ…っ?」
 花月がどういうつもりでマドカを俺の彼女だと紹介したのか解らないが、俺はそう訊かずにいられない。
「あれ…?僕はとっくにそうなってると思ってたんだけど…君、まだ彼女に告白してないの?」
 まるでバカにしたような顔つきで、花月は悪びれもなく答える。いや、これは本当にバカにされてるのか…?
「あー糸巻き、猿マワシにそんな甲斐性なんかねーだろ。完全無欠のオレ様とは違ってよ、ぶほほほほ!」
「蛮ちゃん、そんな意地悪言ったら士度が可哀相だよー。ね、雨流?」
「…そうだな、俺もそう思う」  
 …確かに蛇ヤローにだけは言われたくねぇ。いや、それよりいつの間に雨流と銀次がそんなに仲良くなってんだ…!?
「…人の事言いたい放題言いやがって、大体お前ら男五人で何しに来てんだよ…?」   とにかくこのままでは俺の分が悪くなるばかりだ。これ以上色々詮索される前に、俺はさっきも思った疑問を口にした。それに答えたのは、ぽんっとタレた銀次だ。
「はーい、オレ達は今Wデート中なのです〜Vv」
「W、デート…?」
 タレ銀次の口から語られた言葉にオレは我が耳を疑った。今コイツは『Wデート』と言ったか…!?
「オレと蛮ちゃん、十兵衛とカヅッちゃんと雨流のカップルで、デートしてるんだ♪」
 お前ら正気か、男同士だろ…っ!?まぁ、蛇ヤローと銀次はいつでも鬱陶しいくらいイチャイチャしてやがるし、十兵衛と花月は外見では男同士には見えない。しかし、何故そこに雨流が加わってるんだ…!?
「カ、カップルって…どう成立してんだ…」
 そもそも何で普通に女に恋してる俺がまだ告白すら出来てねーのに、こいつらは同性同士でくっついてるんだよ。
「へ、てめーら親衛隊には悪ィが銀次はオレ様のもんだ…そうだろ、銀次?」
「うん、オレ蛮ちゃんの事大好き…Vv」  
 蛇ヤローが威張り腐った態度で言うのに対して、銀次は頬を染めて答えながら蛇ヤローに抱きつく。『恋は盲目』も同性でだと恐いものだ。
「花月…雨流、俺にはどちらかを選ぶなどという残酷な事は出来ない…っ」
 急に頭を抱えて苦悩し出した十兵衛に、花月と雨流はすぐさま駆け寄る。
「いいんだ、十兵衛…僕も俊樹もそれでも君の側にいたいんだから」
「…そうだ、俺だけを見て欲しいとは言わない…でも、俺の居場所はお前の隣なんだ…」  十兵衛の右側に花月が、左側に雨流が寄り添ってそう言った。すると、十兵衛は光を映さない視線で二人を交互に見やって、
「花月…雨流…っ」
と感動に打ち震えたように二人の名を呼んで、二人をガバッと抱きしめた。
「十兵衛…Vv」
 十兵衛に抱きしめられた花月と雨流が声を揃えてハートマークと共に呟く。図式としては、マドカと俺は未成立、美堂と銀次は成立、十兵衛が花月と雨流の二人と成立している、という状態だと、俺はこの時理解した。
 はっきり言ってかなり面白くねぇ。人前でイチャイチャしやがって…こうなったら俺もマドカとラブラブになってイチャついてやる…っ。それに俺はまともだ、こいつらが変なんだよ。常軌を逸してるとしか思えねぇ。何野郎相手に血迷ってんだ。まともな俺には理解出来ないぜ。
「…行こうぜ、マドカ。こいつらに付き合ってやる必要なんかねぇ」
 マドカがこいつらに毒されないように、一刻も早くここを離れねーと。俺はそう思ってマドカの手を取ってそこから離れようとした。
「えー、士度行っちゃうの?折角会ったんだしトリプルデートしようよ〜」
「それはいい考えですね、銀次さん…♪一緒に遊びませんか、マドカさん?」
 もちろん士度も含めてね、と花月が銀次の意見に賛同してそう言った。…余計な世話焼くなよ、お前ら…。マドカ、そんな申し出無視してくれ…っ。
「…楽しそうですね、士度さん一緒に遊んじゃダメですか…?」
 嗚呼、やっぱそうくるか…こいつらの所為で俺の計画は台無しだ…。でも、マドカの頼みじゃ断れねぇんだよな…。
「…お前がそうしたいって言うなら、俺に断る理由なんかねぇよ…」
 仕方なく了承したら、マドカは嬉しそうに笑った。惚れた弱味っつーか、マドカのこういう顔にも弱いんだよな…。落ち込んでたら笑顔にしてやりてぇとか、悲しませるような事はしたくねぇとか…この俺が、本当にらしくねぇよな。
 こんな事、蛇ヤローや花月に知られたらとことんまで笑いの種にされそうだから絶対奴らの前じゃ口に出来ねーけど。
 そんな訳で、結局二人きりのデートは銀次達とのトリプルデートに取って代わられた。  

 気を取り直して昼食を摂り終えてから、俺達はボート乗り場へと来ていた。
 俺の前に並んでいる二組のバカップル共は終始イチャイチャしぱなっしで、俺はその様子を見せ付けられてうんざりとしている。その上こいつらときたらなまじ顔立ちが整っているもんだから、やたらと悪目立ちして人目を引いて、酷く疲れてしまった。
 早くマドカと二人きりになりてぇ…。あのバカップル共に付き合ってちゃこっちの身が持たねーよ…。
「気ィつけて乗れよ、銀次…揺れるからよ」
「うん、ありがと蛮ちゃん…Vv」
 俺が一人で思考の海に沈んでる内に順が回ってきたのか、銀次と美堂がイチャつきながらアヒルのボートへ乗り込んだ。
「あぁ…っ」
「花月!…大丈夫か?」
「うん…助けてくれてありがとう、十兵衛Vv」
 ボートに乗り込む時に足を躓かせてよろめいた花月を十兵衛が抱きとめれば、花月は艶やかな笑みと共に答える。
 そして花月をボートに座らせた後で、十兵衛が今度はまだボートの前で待っていた雨流に手を差し出した。
「雨流、お前も足元に気をつけろよ…ほら」
 そんな事を言って差し出した手で雨流の手を掴んでボートへと招き入れる様は、とても堅物で通っていた十兵衛とは思えなかった。
「済まない、筧…」
 ハートマークこそ飛んでいなかったが、十兵衛に礼を言う雨流の頬はほんのり赤く染まっている。これが風雅時代に地獄の騎士と言われ一目置かれていた男だというのだから信じ難い話だ。ますます俺だけが出遅れているみたいで、苛々が増す。
「士度さん、私達も乗りましょう?」
 俺のそんな心情を知ってか知らずか、マドカが穏やかに微笑みながらそう言って俺を誘ってきた。本当にこいつにだけは敵わねぇ。マドカの笑顔を見てると苛々してた気持ちも落ち着いてくる。
 そうだ、折角マドカと出かけてきたってのにあいつらの毒気に当てられたくらいで自分を見失っちまうのは勿体ねぇよな…。
「…俺は俺、だよな…」
 あいつらに振り回されて貴重な時間を潰すなんてバカらしい。俺は俺で、今日の計画を実行するだけだ。マドカとずっと一緒に居てぇからよ…。
「…士度さん?」
「…何でもねぇよ。心配すんな」
 俺の事を気に掛けてくれているマドカにそう答えて、俺は先にボートに乗り込んだ。そして中からマドカを誘導してボートへと乗せてやった。ボートを漕いで園内の湖の上を進んでいく。
 マドカは肌に感じる自然の空気に嬉しそうにはしゃいでいたが、そんな彼女を見守る俺は急速にマドカへの恋心が募っていくのを実感していた。


「綺麗…夕焼けが街も人も、皆包み込んで…」
 マドカが窓から見える暮れかけた空を見つめて呟いた。
 実際にはマドカの瞳に景色が映る事はない。それはマドカが盲目だから仕方のない事だ。しかし、その代わりにマドカは心の目で世界を見る事が出来る。肌で大気を感じ、耳で命の鼓動を聴いて、何も映らない目に世界を描いている。
 同じく盲目の十兵衛もそうらしいが、視力がない分他の感覚が鋭くなるらしい。それでも、いつかは本当の空を、本物の自然を見せてやりたい。それが叶わないと知っていても、俺はそう思わずにいられないんだ。特に、こんな綺麗な光景を見ていると…。
 俺とマドカは今、観覧車の中にいる。眼下に広がる世界は豆粒みたいに小さくて、空を自由に羽ばたく鳥はいつでもこんな風景を瞳に映してるんだなと思う。仲間達から聞くのと、自分の目で見るのとでは、やっぱり全然違う。
「…今日は付き合ってくれてありがとう」
 俺が景色に見入っていると、マドカが不意にそう言った。
「何だよ、そんな改まって…」
 ぺこりとお辞儀をして丁寧に礼を言うマドカに、俺は少し戸惑って言葉を濁す。
「士度さんとここに来れて、私すごく嬉しくて楽しかった。こんな風に家の外で遊ぶ事なんてなかったから…本当に感謝してるのよ」
 マドカは心底今日の事が嬉しかったのか、本当に嬉しそうに笑いながらそう語った。  …礼を言うのは俺の方だ。お前が俺と一緒にいて楽しいと、嬉しいと思ってくれた事…俺と来た事を喜んでくれたんだからな。
「…マドカ、俺も…来て良かったと思う。お前とこうして過ごせて、嬉しいぜ」
「…本当…?士度さんも、楽しんでくれてたの…?」
 俺が礼を言うと、マドカは半信半疑といった感じで尋ねてきた。俺は何か変な事を言っただろうか…?
「…士度さん昼食の後から何か考え込んでたみたいだから楽しくなかったのかなって思ってたの…でも違ったのね。…良かったぁ…」
 どうやら俺が退屈していたと勘違いしていたらしいマドカは、ホッと胸を撫で下ろして息をついた。…あのバカップル共に振り回されてた間に余計な心配させちまってたみてぇだな…。
「…悪いな、心配させて…十分すぎる程今日は楽しかったぜ?俺には勿体無いくらいだ…」
 気を遣わせた事を謝ると、マドカは首を左右に振って、勿体無くなんてないと、そう言った。誰にだって幸せになる権利があるわ、士度さんが人生を楽しいと思える為の心配なら私は全然苦じゃない、と…マドカは俺に、こんな俺に優しさを向けてくれる。
 心の奥から溢れ出す感情が抑えきれなくて、俺は夕日に包まれた観覧車の中で、目の前の愛しい存在を抱き寄せた。
「し、士度さん…っ?」

「…好きだ」
「え…?」
「マドカ、お前が好きだ…」

 俺は自分でも不思議な程に穏やかな心情で、正直な気持ちを告白していた。この腕の中の可憐な少女が愛しくて堪らない…。もう、玉砕したって構わねぇ…この気持ちを告げずにいるなんて出来ねぇよ…。
「…嬉しい…、私すごく嬉しい…っ」
 マドカがそう言って顔を綻ばせて俺の背中に腕を回してくる。触れ合った体が熱を上げて、その熱さにクラクラしそうだ。マドカが俺の告白を嬉しいと言ってくれてる。それだけで、世界の全てが色を変えたみたいだ。
「マドカ…」
 腕の中のマドカの頬に手を添えて、顔を向かい合わせる。そのまま、そっと自分の顔を近づけていって…俺は瞼を閉じて受け入れてくれたマドカの唇に、優しく口づけた。   夕日に見守られながら、名残惜しいけれど俺は唇を離してマドカの顔を見つめた。頬を赤く染めて、マドカもオレを見つめている。交わす言葉はなくても、それだけで互いの気持ちが分かった。
 どちらからともなく互いを抱きしめ合って、もう一度キスを交わす。このまま観覧車がついたらきっと蛇ヤローや花月達に散々話のネタにされるだろうなんて事も、もうオレの脳裏からは除外されていた。
 触れ合った場所から確かに感じるマドカの生命の鼓動に、俺はこの瞬間の幸福を噛み締めた―――――。                 ―END―




    以前友人に頼まれて書いたゲスト作品です。普段書かない組み合わせだけに
   本にする機会がなく、折角奪還屋と風雅を出したのにお蔵入りはもったいないな
   と思いまして、記念に置いてみました。
    ノーマルなんてここ何年もまともに書いてなかったので、ある意味アブノーマル
   よりこっ恥ずかしい感じなのですが、如何でしょうか・・・?時間軸は絆編より後の
   つもりなんですが、何故まだくっついてなかったのか・・・この二人(=_=;)
    こんな駄文ですが、感想など頂けると嬉しいです。(中傷はご勘弁下さい)

                                            2004,7,21 up




                                     
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