触れてみたい
きっかけは、些細な事だったと思う。

ほんの気まぐれ…僅かに芽生えた興味がこの体を突き動かした。熱く、身の内から駆け上ってくるように、何かがオレの奥深くで胎動を始めたんだ。

あんな顔を見せるから…。

普段ならけして弱みなど見せようともしないあいつが不意に見せた、儚げで壊れてしまいそうな作り笑い…それがどういう経緯から作られたものなのかは、なんとなく理解出来る。

気を張り詰める性格も災いしていたんだろう、無理をしているのが見え見えの様子で瞳を伏せたあいつの姿に、オレは驚く程自然に惹かれてしまった。

心の奥で、『触れてその傷を癒したい』という思いが芽生えていくのを感じて。

オレはその衝動のままに、夜半にあいつを…九郎を、邸で眠る仲間達から離れた場所へと連れ出した。

九郎は連れ出された理由も分かっていない無頓着な様子で素直にオレについてきて…目的の場所まで辿り着き振り向いたオレをまじまじと見ていた。

六波羅にあるオレの隠れ家の一つ、その中へ案内すると、やっぱり無頓着な様子で辺りを見回して興味深げにしている。

その様子もオレの中に芽生えた九郎への興味を拡大させるばかりで。

もっと、九郎の事を知りたい…九郎の色んな顔を見たい、そんな風に早鐘を打ち始める鼓動を意識しながら、オレは状況の飲み込めていない九郎に腕を伸ばした。

「…ヒノエ…?」

無言のまま九郎の腕を掴んだオレに、驚いたように瞳を瞬かせて九郎がオレの名を呟く。その無垢な視線が、年より幼く感じられる声色が、オレの中に僅かに残っていた理性を突き崩した。

掴んだ腕を引き寄せ、自分よりも僅かに背丈のある九郎を抱き込む。そのまま、耳元から首筋へと唇を落として軽く口付けた。

ビクッと九郎の体が強張るのを、抱き寄せ触れ合った体から感じて。

「…な、ヒノエ、何して…?…っ」


動揺したような声が腕の中から聞こえるけれど、その初心な反応が逆にオレの中の何かを煽って追い立てる。こうなってしまったらもう、触れたい気持ちも…淡く、けれど確実に強くなる想いも誤魔化せる筈がない。

まさかこんなに興味を惹かれてしまうなんてね…軽い火遊びのつもりだったけれど、本気に…なってしまいそうだ。

「…九郎、少し目を閉じてて…?」

そう言いながらオレは、空いている方の手で九郎の目元を覆ってもう一度首筋へ口付けた。そのまま舌を這わせながら、衣の隙間から鎖骨の形をなぞる。

ブルッと九郎の体が震え、吐息が開いた口から零れる。

…んっ…ヒノ、エ…?ゃ…くすぐったい、ぞ…っ」

オレの舌の動きに戸惑うように視線を揺らして、ささやかな抵抗とばかりに九郎は反論してくる。けれど、吐息の混じった九郎の声は余計にオレを駆り立てていくだけで。

反論はするものの逃げようとはしない九郎に、オレは目元を覆っていた手を明確な意思を持って九郎の腰元へと移動させた。腰を撫でながら、隙を見て衣を纏めている帯を解いた。

シュルッ、という音とともに帯が床へと落ちて。纏めるものを失った衣の端を掴んで前をはだけさせてから、姿を見せた九郎の白い肌へと口付けた。

「…っ、…ぁ…」

オレが舌先で九郎の肌を舐めると、甘やかな声が躊躇いがちに漏れ出る。その素直な反応が嬉しくて、オレは何度もその行為を繰り返す。

「…は、…んっ…ゃ…ヒノエ…っ、何故…?何故こんな事を…っ、…ぁっ」

どうしてオレがこの行為を強いているのか分からない九郎は、不安げに視線を彷徨わせて尋ねてくる。本当に、人を煽るのが巧いなどと感心しながら、オレは九郎の肌から唇を外し、僅かに潤んだ目尻を舐めた。

何故、九郎にこんな行為を強いたのか、それは至って簡単だ。九郎に煽られる自分を悪くないと感じ、急速に、激しく九郎に惹かれ始めているからだ。『触れたい』と思った欲のままに、突き動かされる衝動に従っただけ。

「…それは、オレが九郎の事を好きだからだよ…触れたいから…こうして、お前にさ…」

「…え…?好、き…とはどういう…んっ…んんっ…」

オレの言葉に無防備な表情で返してくる九郎の唇を唇で塞いでそのまま口付ける。言おうとした九郎の言葉はオレの唇で飲み込まれ、九郎からはくぐもった声が零れた。

「…ふ、ぅん…っ、んん…っ」

口付けを深くするオレの胸元を軽く叩きながら、深まる接吻で収まりきらなくなった唾液が九郎の顎から伝い落ちて、距離の縮まっているオレと九郎の首元を濡らす。

そうして深く口付けを交わし唇を開放する頃には、九郎は全身の力が抜けたようにオレに体重を預けてきて。

「…オレはお前とこういう事をしたいくらいに、お前の事が好きだよ…九郎」

口付けによって刺激を受けたらしい九郎の年には似合わない可愛らしい中心を手のひらで包んで、揉むように緩やかに刺激を送りながら、耳元へと囁きかける。

「…っ、ぁ…な、何を言ってるんだっ?そんな…事…んっ…ぁっ」

オレの手のひらの動きに翻弄されながら、それでも九郎はオレの言葉に懸命に受け答えをしようとしてくれる。…参ったな…何でそんなに可愛い態度とってくれるかな…本当に、嵌ってしまいそうだよ…お前に。

「…今はオレの気持ちを否定しないでくれて、辛い時に頼ってくれたらそれでいい…ねぇ、九郎。お前はオレにこんな風に想われるのは嫌…?」

少し沈んだ表情でオレは九郎に問いかける。この芽生えたばかりの感情をなかった事にされる事は身を裂かれるより辛い事だろう。

すると、九郎は気恥ずかしそうに顔を逸らしてはいたが、静かに答えてくれた。

「…嫌では、ない…お前が俺に好意を持ってくれた事は、素直に嬉しいと…思う」

意外だった。てっきり否定されたり拒まれたりという事くらいはあるかと身構えていたけれど、実際には九郎はすんなりとオレの気持ちを受け入れてくれた。

その事実が嬉しくて、オレは九郎を腕の中へ深く抱き込む。

「…ねぇ、九郎…このままじゃ辛いだろう?続き、してもいいね…?」

オレの手で中途半端に昂ぶった九郎のものと九郎とを交互に見やり、少しだけ意地悪く笑って見せた。

「…バカ…嫌だと言っても止められないんだろう…?」

顔を赤く染めながら悪態をついてくる九郎は、けれどとても穏やかな様子でふわりと笑う。その笑顔に機嫌を良くしてオレは、九郎を傷つけないようにそっと九郎の体を地面に押し倒して。

「…ご明察。…好きだよ…可愛い九郎…」
「…可愛いと言うのは余計だ…っ」

軽い遊びのつもりが既に抜けられない程に本気で九郎に惚れてしまっている事を自覚しながら、オレは九郎の体を優しく、愛おしく…抱いた―――――。


ヒノエお題の一つ・火遊びをヒノエ×九郎でお届けしました♪しかし…思っていたほどエロくならなかったかもです…σ(^◇^;)でも表に置くにもちょっと…な内容かもだし(笑)いつかもっとエロいヒノ九が書きたいです(笑)
何はともあれ反響が気になりますです…(笑)
感想お待ちしてます☆彡





















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