「え…?…あ、ま…待て…ヒノエ…っ」

混乱する思考のままに九郎が口にしたのはやはり抵抗の言葉であったが、しかしそれは明確なものではなかった。まだ混乱の方が理性よりも勝っているのだろう。
しかし、そうしている隙にヒノエの手は無残にも九郎の帯を完全に取り去ってしまった。

「待たない」

帯の次は当然九郎の身を纏う可愛らしい着物だ。合わせの部分へと手を伸ばしたヒノエに、焦って慌てふためく九郎だが、やはり抗議の声はまるで意味を成していないように見える。

「…ゃ、め…何、して…っ?」

そんな九郎の無意味な抵抗はヒノエの行動を止める為には何の役にも立たない。それどころか、望美の期待に満ちた眼差しが痛い程に突き刺さってきて、九郎は泣きたい気持ちになった。

「わvわv本当に生本番見せてくれるの?いや〜ん、嬉しすぎて萌え死ねそう〜vv」

すっかり見学モードの望美にやる気満々のヒノエ。このタッグはある意味最強といえる気がする。純粋培養な九郎に上手く逃れる術など見出せよう筈もない。

「…出血大サービスってとこかな、満足するまで存分に見てくれていいよ」
「ありがと〜ヒノエ君、助かるわ〜。これで次の新刊は決まりね!」

既に同人誌のネタにする気でいるらしい望美は、どこから取り出したのかコンパクトサイズのビデオカメラを持ち出した。この時空でどうして動くのか、そもそも何故現代の利器を持っているのかは深く追求してはいけない。それは彼女が龍神の神子だからできる事なのだ。

「…また俺の理解できん話をしている…」

意思疎通の出来ている望美とヒノエを恨めしく見やりながら、九郎は深い溜息をついた。どうやら本気で覚悟を決めなければならないらしい。

「さ、九郎…観念して神子姫に協力してね?」
「い、嫌だ…ヒノエ、こんな所でなんて…っ」

にこりと笑ったヒノエに、無駄と知りつつも最後の抵抗を九郎は試みる。が、それはやはり今更どうにもならなかった。ヒノエによって床に押し倒され衣を乱された九郎には、最早逃げ道はない。

「…もう遅いよ、九郎…」
「まっ…っ、ぁ…ん」

あまりにも抵抗を続ける九郎に痺れを切らしたのか、ヒノエは先程より更に濃厚な口付けで九郎の唇を奪った。同時に剥き出しになった九郎の肌に手のひらを滑らせていく。
待ちに待った展開に有頂天の望美は嬉々としてカメラを構え、二人の姿を納めている。

「…人に見られてると興奮するって本当だな、ほら…九郎のここ、もうこんなになってる…」
「なっ…嫌だ、触…るな…っ」

既に形を変えている九郎の昂ぶりに視線を落としてクスクスと笑いながら指摘してくるヒノエに、九郎はそれを肯定したくない一心でつい反抗的な態度を取ってしまう。勿論それが更に墓穴を掘っているという事は気付いていない。

「そんな事言っても無駄だよ…体は正直だからね」
「…ぁ、んんっ…ゃぁ…っ」

絡みつくヒノエの手が形をなぞるように天を突く昂ぶりを扱き始める。するともう、九郎の抵抗の言葉は簡単に甘い声へと変わった。
ヒノエがしてやったりな顔をするのと同時に、カメラを回す望美がガッツポーズを作る。

「…九郎、普段じゃ味わえない刺激をお前にあげるよ…」
「しっかりカメラに収めますから、存分に喘いで下さいね、九郎さんっ♪」

意気揚々とカメラを回し続ける望美と何処か強引なヒノエの様子を、九郎は困った顔で見やる。とてもではないが一人では歯が立ちそうにない。かといって誰かに助けを求める訳にも行かず、九郎は穴があったら入って閉じ篭ってしまいたい気分で、大きな溜息を零すのだった。



「…んっ、ふ…ぁ…」

結局あのまま望美のいる前で行為を強要された九郎は、見られている事への恥ずかしさなどを気にしている余裕など奪われて、すっかり与えられる刺激に溺れていた。
随分と手馴れた様子で九郎を翻弄していくヒノエの巧みな指先に、カメラを構えたままの望美は益々ヒートアップして二人の行為を見物している。

「…ヤバイな、本当にどうしてお前はオレをその気にさせるのがそんなに上手いのかな…?」

九郎の肌に唇を寄せながら呟くと、ヒノエはそれまで指で刺激していて柔らかく解けた秘所から指を引き抜いて、九郎の脚の間に身を滑らせその脚を肩に担ぎ上げ、抜いた指の代わりに既に痛い程に張り詰めている自身の昂ぶりを宛がった。

「…わvいよいよそこへ行くのね♪」

ついに人前で最後までやってしまう事に九郎が息を呑む音と心底嬉しそうな望美の声が重なる。
切っ先の先端が遠慮なく九郎の解された蕾へと押し入ってきて。
下腹を突き上げるような衝撃に九郎の口から苦しげな息が零れた。

「っ!…あぁっ」
「くっ…」

入り込んできた異物の大きさについ締め付けてしまう九郎の内壁に、ヒノエからも息を詰める声が零れる。けれど、散々慣らした体が馴染むのにそう時間は要らなかった。
すっかり九郎の中に昂ぶりが馴染んだのを肌で感じ取ってから、ヒノエは腰を使い始める。その頃にはもう九郎の体も素直に快感だけを受け止めるようになって、ヒノエが突き上げれば自然と九郎の腰も揺れた。

「あっ…んんっ、ゃ…あぁ…っ」
「…熱い…九郎の中…サイコー、いつもより興奮してる…」

もっと深く、と交わりをより強くしながらヒノエが甘く囁く。並の神経の女性ならここまでで既にヒノエのエロティックなムードに酔いしれて立ってなどいられないだろう。
しかし、望美は違った。いや、酔いしれてはいるがしっかりと地に足をつけカメラを構えて美味しい激写シーンを収めている。なかなかの豪の者だ。

「フフ、フフフフフ…これぞ萌えの最骨頂ね!美味しい、美味しいわvv」

既にやばい人と化している望美を他所に、相変わらず行為を続行中の二人は二人だけの世界に入り込んでしまったようだ。

「…九郎…」
「…ふ、ぁ…ぁ…ヒノ、エ…ヒノエ…っ」

とっくに九郎の理性は消し飛んでいるらしい、望美に見られている事などすっかり忘れてしまったかのように快楽に溺れヒノエに縋りついている。

「…九郎さん…本当に可愛い、普段の何百倍…ううん、何万倍も可愛いわっvv」

望美にこんな事を言われているなど露とも知らない九郎は、ただその潤んだ瞳にヒノエだけを映して限界が近づいている事を必死で訴える。

「…あっ、ゃ…も、う…っ」
「…我慢できない?」

九郎を突き上げながらそう甘く囁くヒノエに、何度も首を縦に振って九郎は主張する。確かに手のひらで包み込んだ九郎の昂ぶりは、もうこれ以上ないくらいに張り詰めていていつ弾けてもおかしくない。

「解ったよ、オレの姫君…」
「…っ、あ…あぁっ…あぁぁ…っ!」

ヒノエが口付けを首筋に落としながらより強く自身の楔を穿つと、九郎の体が強すぎる刺激にビクビクッと震えた。その直後、熱くぬめった体液が九郎の張り詰めていた中心から吐き出され、少し遅れてヒノエも溜まった熱情を深く繋がった九郎の内部へと吐き出した。

「フフフ、ありがとうヒノエ君vヒノエ君のお陰でとてもいい画が撮れたわ♪」
「どういたしまして。オレの方も周りへのいい牽制になって助かったよ、九郎は本当に無防備だからね…」

巻き込まれた九郎にとっては災難としか言いようがないが、互いの利害が一致していた望美とヒノエは実に満ち足りた顔をしている。ある意味、理性が途中で飛んでしまって正解だったかもしれない。
その九郎はというと、達した瞬間に意識も手離したのか無抵抗な様子でヒノエに体を預けぐったりとしていた。初めての人前での契りに、精神力も体力も使い果たしたのだろう。

「本当に無防備ねー…これじゃあ確かに心配にもなるわね、うん、良く解ったわっ」

一人で呟いて納得して結論を出すと、望美はグッとヒノエの肩を掴んだ。

「これからも協力してあげる、九郎さんに悪い虫がつかないように!」

そうしてあっさりとそう言い放ちヒノエの肩から手を外して、望美は先程のカメラを片手にその場を去ってしまった。後には意識のない九郎とヒノエが残されるのだった。


それから後、二人の情事がアダルトビデオのように編集されたものが様々な場所で闇ルートを通じて頒布されたという。


望美の恋愛研究道場・九郎受け編-ヒノエ-ED2

何とかヒノエが完成しました。こちらは分岐後に行けるもう一つのヒノエEDになります。あの場面ではっきり断れず流されたという展開です。もう一つの展開を正EDとするならばこっちはBADENDです。
ここでは益々望美がすごい人になっていましたが、受け入れてもらえるのだろうか…。
初の試みだったので、感想がもらえると残りの四人の分を書く時に参考になるので指摘などあったらぜひメールフォームか一言でお願い致しますm(__)m


















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