囚われる


(…一体、何でこんな事になってんだ…?)


 ぼんやりと、天真はそんなことを思った。目の前には、何とも意外な人物。

「…何だよ、そんな凍りついたような顔して…無反応かよ?」

 クッと口角を上げてからかうように言うのは、燃え立つような色の髪と瞳を持つ少年。

「…お前、何でいきなりこんな事…冗談でも質悪いぞ」

 地に押し倒されている身体に覆い被さるように膝立ちしている目前の少年へ、天真は毅然と言い放つ。

「冗談…?これが冗談でやってるように見える訳?」

 内心の動揺を出そうとしない天真の態度に、何が楽しいのか笑みを作ってそう言う。それと同時に少年の手が、天真の襟元からタンクトップの中へと進入して。

「…っ。何処に手、入れてんだよ…?」


 思わず息を詰めながら、拒むようにその手を止めようとする。しかし、自分より年下でまだ子供だと思っていた少年の天真を捕らえる力は意外に強く、片手で地に押さえつけられている両手首は動かす事すら出来なかった。

「大人しくしてろよ、天真・・・悪いようにはしねぇって…」

 そう言いながら、押さえつけた体と両手首はそのままに距離を詰めてくる。

「…くそっ、離せよイノリ…っ」

 迫ってくるその少年の名を呼んで抵抗を試みるが、名を呼ぶ為に開いた唇をそのまま塞がれてしまう。

「…んん…っ!?…ぅん・・・んん…ん…っ」

 いきなりの事に抵抗する間さえなく、強引に歯列を割られて深く口づけられる。その為天真はくぐもった声を漏らしながら苦しげに眉を寄せた。

「…んふ…んぅ…っ、…んんっ…」

 何度も口角を変え、舌を差し入れ絡めら取られ、溢れ出た唾液が天真の顎を伝う。その間にもタンクトップの中へと進入を果たしている手は、天真の肌の上を敏感な箇所を探すように這い回っている。

「…んっ…も、止めろイノリ…ぅんっ…」

 口付けに煽られて僅かに潤んだ瞳でキッとイノリを見据えて、口付けの合間に制止の言葉をかけるが、再び唇を覆われ、更に逃れられないように両手首を押さえつけていた方の手で後頭部を固定された。
 結果、逃れる事適わずまた深い口付けを受けてしまう。

「んん…っ、んふ…んっ…、はぁ…」

 十分に天真の口内を堪能してからイノリの唇が離れ、天真は空気を求めて息をついた。すると。

「…へぇ…接吻だけでこんなになるなんて…身体の方は随分正直じゃん?」

 乱れた息を整えようとしている天真を解放するどころか更に身を寄せながら、イノリはそう言った。イノリの視線は形を変え始めた天真の下半身のものに向けられている。

「っ…!?そんなとこ見るなよ、お前…っ」

 下半身に注がれる視線に羞恥を感じながら、天真はそう言ってイノリに文句をつける。だが、その強気な態度はどうやら逆効果だったらしい。

「…これじゃきついだろ、天真…オレがしてやるよ」

 そう言うと、天真が逃れようとするより早く、あっという間にイノリは天真の下衣を剥ぎ取ってしまった。突然外気に晒された下半身に、天真は思わず身震いする。

「ちょっと、待てよお前…何する…ぁ、…っ!」

 剥き出しにされた中心のモノを、イノリの掌が包み込み潰してしまわない程度の力を加えられ、扱かれる。

「気持ち良く、してやるからさ・・・逃げんなよ?」

 そう言うイノリの瞳は、逃がしてなどやらないとでも言うように鋭く天真を捕らえている。どちらにせよ、この状況は逃れたくとも逃れられそうにない。少なくとも握りこまれている下半身のモノを解放してもらわない事には逃げ出す事は出来ないだろう。

「逃がすつもりなんて、ない癖に…良くそんな事が言えるな…」

 逃げられない事やあっさり捕らえられてしまった事に対する悔しさを込めて、強くイノリを見据えて天真は悪態をつく。その瞳が例えようもなく嗜虐心を煽って。

「・・・逃げられなく、してやるよ…」

 年相応の少年とは違う、雄の顔をしてイノリは覆い被さった天真の耳元へ囁いた。焼け付くような熱情を孕んだその声は、天真の脳髄を痺れさせて。

「…っ…」

 視線を逸らす事も、身を引く事も出来ずに、流されるように天真はイノリの行動を受け入れざるを得なかった。





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