4


耳を塞ぎたくなるような激しい貶し合いと共に、二人の四つの手が天真の体のあちこちを這いずり回る。頼久に口内を犯され、イノリに下肢を舐められ中心を含まれて犯される。自然と上がる息に抗おうとする思考は奪われて。

「…ぅん…んふ…、はっ…ぁん…んっ…んむっ…」

苦しげに息をつきながら逃れる舌を絡め取られ、より深く口付けられる。二人の体で押さえ込まれた天真の体は、ゆっくりと頭をもたげだした快感に震え始め、天真の抵抗力をことごとく奪っていく。

(…嫌だ…こんな風に何もかも奪うように、抱かれるなんて…こんな…俺の意思なんて関係なしに…ただ犯され踏み躙られるなんて…いや、なのに…逃げ、られない…)

声にならない悲鳴を上げる心を、伝えられない言葉を喉の奥に押し込んで、沼底から這い上がるような喪失感に耐えるしかなく。
それでも体だけは確実に熱を持ち、昂ぶっていく事が、ただ、辛かった。

「…ぅ、ぁっ…んんっ…ゃ…あぁ…んん…っ、んっ…」

嫌だと言いたいのに、言葉は飲み込まれて上手く声にならない。
火照っていく肌から、触れる手に震える体から、追い上げられ始めているのが伝わり、悔しく思うもののどうにも出来ず。
まだ解放を許されない唇からはくぐもった声ばかりが洩れる。

「…ふ…ぅん…んっ…」

何度も口角を変えて口付けられ、天真の口の端から収まりきらなくなった唾液が零れる。それを頼久が唇を漸く外して舌で掬い取る。
そのまま、首筋や鎖骨も舐められ、体を這う手は胸の飾りを執拗に弄っている。
下肢の方ではイノリが銜え込んだ中心を形をなぞるように舐めたり、零れてくる蜜を手に掬って後ろの蕾へと塗り込めたりしていて、休みどころのない刺激に、自由になった天真の口は堪えきれずに甘い声を上げた。

「はぁ、…ぁん…や、それ…するなって…イノリ…っ、ん…ぁ…頼、久…も、やぁ…あっ、あぁん…」

何とか些細な抵抗を試みるが、甘く蕩け出した声では説得力もない。それどころか掴まれた痕の残る腕は力が入らず、煽られていく体も二人にされるがままだ。

「…フ、そんな声を出して今更何を…嫌ではないだろう?」

「…お前がどっちかを選ばなきゃこのままだぜ?オレか頼久か、決めなきゃずっとこうしてオレ達に奪い合われる…尤もお前が選んだからって諦めきれるとは言えねぇけどな」

クッと二人して冷笑を浮かべ競うように愛撫を与えながら、そう言い放つ。
確かに、このままでは現状は何も変わらないだろう。かといってどちらかを選ぶ、そんな権利が今の自分にあるのだろうか。
天真は困ったように視線を彷徨わせて、呟く。その間にも愛撫の手は止む事はない。

「そんな…選べって、言われても…ぅんっ…あっ、あっ…はぁ…ぁん…っ」

呟く声は与えられる刺激で甘い嬌声に変わり、熱を溜め込む体がもどかしそうに震える。思考には既に靄がかかり、考えようとも上手く纏まらない。

「選べないならこのまま私達二人の欲の捌け口のままだぞ…それでもいいなら私は無理に選べとは言わないが?」

既にイノリの指が進入している奥へと、頼久の指までもが挿入される。細部まで余す所なく与えられる二人からの刺激は天真の脳髄を確実に痺れさせていく。

「…そうだよな、頼久なんて自分が選ばれなかったら何しでかすか分からねーとこあるし…オレだってお前が頼久選ぶなんて言ったらどうするか分からないぜ?」

イノリの手で包まれた天を突く中心と頼久の触れる胸元と、二人から攻め立てられる蕾と。とめどない快楽の波に、僅かに残っていた天真の意思は脆く崩れていく。

「…ぁふ…あっ、あぁん…頼久…イ、ノリ…あっ…そんな…俺…は、ぁぁ…あぁんっ」

天真の僅かな抵抗がなくなったのを感じ取り、先へ行く為に二人は執拗に天真の中を解す。指を増やし前を刺激して口付けを至る所に与える。

「そろそろだな…天真、覚悟しろよ?手加減なんか出来ないからな…」

既に余裕を失くした声でイノリが言い放つ。

「…もう、ここまで来て抑える事は出来ない…お前を逃がしてなどやらぬ…」

射るような視線と共に、低い頼久の声が響く。

「…え、嘘…ゃ、そんなの無理っ、ぅあ、あぁ…あぅ…っ!」

必死の抵抗も空しく、強引に潤された箇所に二人の猛るものが押し入ってきて、天真は堪らず悲鳴を上げる。
物理的にいっても二人分など入る筈もないというのに、それでも二人は少しも譲らず無理やりに自分のものを天真の中に捻り込む。
当然ながらそんな事を強要されて、天真のそこは裂けるような痛みを訴え、赤い雫を走らせる。
いや、実際に裂けているかもしれない。メリメリと音を立てながら、それでも深くに行こうとする二人に、天真は零れ出る涙も止められずに激しい痛みを訴えた。

「あぅんっ…痛、い…痛い…っ、ひぁ・・・っ、抜い、て…痛い…っ!」

苦痛に顔を歪ませながらそう懇願するが、二人はそんな天真の言葉を聞くどころか、より強く深く、熱い楔を穿ってくる。スパークを起こしそうな激しい痛みに、天真はただ体を投げ出して喘ぐしか出来なくて。

「ぐぅ…ぅあっ、あぅ…あっ、あっ…より、ひさ…イ、ノリ…ゃぁっ…ぁぐ…っ!」

目まぐるしく、記憶が走る。まだ、こんな二人を知らなかった頃の、今は遠い日々が。
手を伸ばしたくても伸ばせない、届く事のない、思い出達が…崩れていく。

「天真…離さねぇ…お前をこの腕にずっと閉じ込めてやる…」

「逃げられぬように捕らえて、お前が私だけを求めるようになるまで…何度でも追い詰めてやろう、天真…」

深く、熱く…氷炎の棘が天真の奥深くを貫く。最後の叫びはまともな声にならなくて。

「うぁ…っ、ひぅ…あぁっ、ああぁぁぁ―――――!!」

どこか遠くで、何かが壊れる音が聞こえた。

(…選ぶなんて…出来ない…もう今更…頼久に想いを告げる事も…)

ぼろぼろに蹂躙され深く傷ついても、それでも天真には二人を憎む事も恨む事も出来なかった。

(悪いのは…イノリを拒めなかった俺なんだ…頼久にも何も言えずにいた俺が…この結果を、招いた…)

薄れていく意識の中で、自分を熱く見つめている頼久とイノリを見上げる。

(あれは不可抗力だった…でも、俺がイノリと関係を持ってしまったのは事実で…こんな俺が今更何を言えるんだ…?もう、何もなかった頃になんて、戻れないのに…)

激しいまでの渇望で自分を求める頼久とイノリを、選ぶ事など…たとえ天真自身が望んだとしても、許されるのだろうか。いや、二人が許せるというのだろうか。
その答えは、天真にはもう、分からない。

(選べ、ない…俺には…出来ない…このまま、二人に囚われ続ける事になっても…)

折れて堕ちた翼ではもう、高い空など飛ぶ事も望む事も出来ないのだ。
ただ、静かに朽ち果てていく時を待つ事だけが、地の底に堕ちた者に許された唯一つの、救い。

けれど、自分は救われる事さえないのだろうと…飛ぶ事を許されない天真は痛い程に思い知る。
地を這うこの体を二つの冷たく熱い眼差しが捕らえて離さないから。

闇へと沈んでいく意識に身を任せ、天真は静かに眼を閉じた。

もう、目覚める事のない悪夢を…その脳裏に焼き付けて―――――。



The End



ハフー、やっとこさ完結ですσ(^◇^;)
この作品はイノ天お試しSSとして書いた『囚われる』の続編として1500HITされた戒堂美夕ちゃん、私の相方のリクエストで書きました。

それにしても痛いお話です…自分で言うのもなんですがね、もろにBADEND( ̄□ ̄;)!!
しかも無駄に長い(笑)
救われてない天真が痛々しい内容です…ある意味心が壊れる方が天真には救いだったかもですが、精神崩壊にもっていくとオフラインで発行した方の話とかぶりますからね…。裏に置くならもう徹底的にBADENDにしちゃえと、こうなったんだけれど…大丈夫ですかね?美夕ちゃん…σ(^◇^;)
とにもかくにも、イノ天はともかく頼天でここまでプッツンした頼久を書いた事なかったので難産&不思議な感覚でした…(笑)世にも貴重な頼久かも…うちでは(笑)ああ、甘々ラブラブな頼天書きたいな(笑)←多分今回の反動
こんな話ですが、感想お待ちしてます(笑)






前へ 戻る






























アクセス解析&SEM/SEO講座&ブログ for オンラインショップ開業